桜に導かれし魂
ビクっと肩を震わした後うつむいていた顔をあげ俺をまっすぐにみつめてこういった。
「他に好きな人ができたの」
あいかわらず綺麗なその瞳に迷いはない。真剣な眼差しで彼女はもう一度呟いた。
「他に好きな人ができたの」

うそだろ。
「うそだろ……なあ!楓!!」
思考回路がショートしたみたいに俺は夢中で楓の肩をつかみその小さな体を揺さぶった。
「うそだよな……、楓………!」
楓は口を開かない。
そのとき扉が開いた。
「おい!右京!!なにしてる!」
驚いた玲夜が俺と楓を引き離す。
「おちつけ右京!」
「離せ玲夜!」

どんな言葉も聞こえない。
どんな言葉も届かない。

「私!」
俺と玲夜が思わず動きをとめてしまうような大きな声を放ったのは楓だ。
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