桜に導かれし魂
「私、玲ちゃんが好きなの。もうきょうちゃんのこと好きじゃないから」
もう返す言葉も気力もない。
「右京……」
玲夜が哀れむように俺の名前を呼ぶ。
やめてくれよ。
そんな顔でそんな目でみないでくれ。

トリをしめくくったのは冷たい目をした楓の一言だった。
「もう、お見舞いも来なくていいから……」

やっと冷静に考えられるようになってきた。
楓が選んだのは玲夜だったんだな。俺じゃない、玲夜だ。
楓が玲夜の側にいたいと願うのなら、それが君の望んだことならば、俺は…………
「そ、うか……。わかった………。ごめんな、楓」
ガラガラッ。ピシャ……。
扉の閉まる乾いた音が廊下に響く。



あぁ。こんなにも愛おしい。




その日から俺が楓を見ることはなくなった。










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