桜に導かれし魂
もうひとつの出会い

立ち止まる時

あの日から数ヶ月、また肌寒い季節が迫っていた。学校に行っても玲夜とはほとんど話さない。俺は完全に孤立していた。とてもじゃないがなにかをするきになんてなれない。

なにやってんだろ、俺。

頬杖をつき窓の外に目をやると青かった葉っぱもすかりオレンジ色に染まっていた。ぼーっと外を見ている俺にひとりの女の子が声をかけてきた。

「小湊君、放課後の図書当番代わってくれないかな?今日どうしてもはずせない用事ができちゃって」
少し前の俺なら楓の見舞いがあるからと断っていただろうけどいまは断る理由もそれをかわすうまい嘘もみつからない。
「あぁ、わかった」
「ほんと?!ありがとう!じゃあ3組の佐久間 朱里って子がいると思うから詳しいことは彼女にきいて。それじゃあ、ほんとにありがとう!」
そういって彼女はスカートを揺らしながら走り去ってしまった。







――――――放課後


言われたとおり俺の足は図書室へと向かっていた。
病院とは違う緑色の廊下を通るだけの毎日。
クリーム色の道はない。
鼻がスースーするような薬の匂いもしない。
楓のいる扉もない。
永遠だと思っていたなにもかもがなくなってしまった。



ガラガラ


あの日、俺が扉を開けるのと朱里が振り向いたのはほとんど同時だったかもしれない。


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