桜に導かれし魂


高いところは俺が、低いところは朱里が整理していく。要領のいい朱里と整理をするのに時間はかからず30分程度で図書室の整理は終わった。
「よし、これで最後」
「終わったわね、右京ったらりかより要領がいいんだもの」
おかしいといってクスクス笑い出す朱里。そのあとふーっとため息をついて窓の外を見つめていた。とても切なそうに。でもふと俺のいることを思い出したみたいに振り返った。
「そろそろ帰りましょうか」
「あぁ」
図書室をでると俺たちは薄暗い廊下を背を向けて歩き出した。


あ………匂いが変わった。
もうすぐ冬がやってくる。






あの日から俺は毎日放課後の図書室へ訪れるようになった。朱里が楓に似てるから、なんとなく似ている気がしていたから。会いたかったんだ。

「あら、右京いらっしゃい」
「いらっしゃいってお前、毎度毎度自分家みたいないいぐさだな」
「違うわ、気に入ってるだけよ。ここが好きなの」
「ふーん」
ひとしきり俺にあいさつした朱里はまた窓の外を眺めていた。
いままであまり気にしたことなかったけど気づくといつも朱里は窓のほうを眺めている。なぜかこの日ばかりはそれが気になって朱里に話しかけた。
「ねぇ、いっつもなに見てんの?」
一瞬顔を強張らせたかと思うと朱里は眉間にしわをよせて痛々しそうに微笑んで口を開いた。
「いつ聞いてくれるかと思って待ってたわ。右京ったらいっつも見てみぬふりなんだもの」
「いや…きいちゃまずいかと思って」
「ううん。誰かにいわなきゃ終われないから……」
「………………」
短い沈黙だったけれど1分1秒がとてつもなく長いものに感じた。

「図書室のこの窓からはね、グランドがみえるの」
「グランド……?」
「そう。好きな人がいたの」
好きな人、か…………

「朱里は誰が好きなの?」
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