桜に導かれし魂
「入学してすぐ高橋先輩をみて、一目惚れだったわ。それからいつも練習をみていたら4月の終わりくらいに告白されたの。付き合ってくれないかって」

びっくりなんてもんじゃなかった。びっくりもなにもあの豪さんが告白なんて信じらんねぇ。
それからしばらく朱里の話をあっけらかんときいていると初めて会った日に流していた涙のわけをしることになる。


「だけど右京と会ったあの日急に言われたのよ、別れてくれって」
「………なんで?」
俺がそう聞くと朱里が答えるより先に図書室の入り口から懐かしい声がした。
「サッカーに集中したいといったんだ」
声の主は俺でも朱里でもない。
「豪さ…
「豪………」
愛おしそうに豪さんの名前を呼ぶ朱里を豪さんが冷たく突き放す。
「朱里、学校では先輩と呼べといったはずだ。それに終わったことを長たらしく俺の後輩にはなすんじゃない。いい加減俺のことは忘れろ」
びっくりなのは朱里の発言だけではなかった。幾度となく豪さんの真剣な顔を見てきたけれどこれほどこの真剣な顔を、眼差しを怖いと思ったことはなかった。だけどさっきからびっくりすることの連続でなにがなんだかさっぱりな俺とは裏腹に豪さんに負けじと強気な態度の朱里が強い口調で言い放った。
「豪、私やっぱり豪がすき。豪がもう私を愛していなくても私は…」
「迷惑だ」
それだけいうと豪さんは図書室からでていった。
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