桜に導かれし魂
学校に近づくにつれて俺たちと
同じ制服を着た生徒たちが多くなる。
そしてみんなが俺たちを見てなにやら
ざわざわしているが、俺も楓もきにしない。
付き合っているわけではないけれど
俺たちにはそれ以上もそれ以下もない、
ただの幼馴染なんだからやましいことは
なにひとつない。
自転車を置き校舎へと向かう。
はじめの角をまがると
視界がおおきくひらけて
俺の目は一面ピンク色につつまれた。
そしてピンクの中で楓が俺に笑いかける。
「みて右京、桜よ!」
そこにはとても大きな桜がそびえたっていて
その大きな桜をみて俺の横で
楓はおおはしゃぎしていた。
おいおい待てよ。
だめだ、デジャヴだ。このあと絶対
「おい楓、転ぶぞ」
「大丈夫だっ、きゃあ!」
なにもないにもかかわらず
バランスをくずす楓。
「ったく、いわんこっちゃねえな」
はぁ~。
間一髪楓を抱きとめた俺は
ほっと胸をなでおろす。
「ごめ~ん」
舌をだしておどけてみせる
楓の細い腕を引っ張り上げ
砂のついたスカートを数回はらってやると
俺たちを見てまた騒ぎ出す周りの生徒たち。
俺の心配をよそに転ぶ楓と
はやしたてるようなまわりの声に
やれやれと思いながら
再び校舎へと足を進めるが、
「あ、右京ストップストップ、
桜の花びらついてる。
ちょっとしゃがんで~」
また楓の声に足を止める。
俺が腰を曲げて頭を落とすと
楓は俺の頭についてた花びらを
優しくつまんでみせた。
「ほら、とれた」
「ん。さんきゅ」
また強い風が俺たちをふきぬける。
それにあわせて舞う花びらたちは
……とてもきれいでかなしかった。