桜に導かれし魂
「豪………」
呟く朱里の瞳に涙はなかったけれど俺はどうしてもこんなに優しい人がどうして朱里に対してあんなに冷たいのかがきになって豪さんを追いかけた。
「……………っ豪さん!!」
俺の声に反応して豪さんが振り向く。
「右京、久しぶりだな」
さっきとはうって変わって懐かしい笑みを浮かべるのは俺のしっている豪さんだった。
「お久しぶりです」
「足の調子はどうだ?」
「おかげさまで良好です。あの、豪さん、俺……」
「………朱里のことか?」
普段勘のいい方とはいえない豪さんもさすがに今回ばかりは俺の聞きたいことがわかったようだ。
「はい。なんであいつにあんな……
「嫌いなんだ。もう愛してないんだよ」
俺の質問を最後まで聞かずに豪さんははっきりと告げた。
「ただそれだけのことだ。あいつがかわいそうにみえるのなら右京、お前が慰めてやれ」
淡々と話す豪さんはもう振り返らなかった。
「豪さん………」
とぼとぼと図書室に戻ると朱里はまた窓の外を、グランドをみつめていた。
「ごめんね、右京」
謝る朱里の姿にはっとした。あの日の楓と同じ瞳をしていたから。
……………助けたかったんだ。
「もう、疲れた…………」