桜に導かれし魂
俺の胸に飛び込んできた朱里を助けたかった。その時の俺には玲夜を選んだ楓よりも豪さんに必要とされなくなった朱里を守りたいと思ったんだ、朱里の気持ちを俺ならわかってやれるんじゃないかと思ったんだ。


「……なぁ、俺にしとかないか?豪さんだと思っていいから………豪さんのかわりでいいから。俺にしとけよ」
きたないと思った。
かわりを求めてるのは朱里じゃない。俺のほうだったのに。朱里のせいにした。
「豪……」
大好きな豪さんの名前を朱里が呼ぶ。憧れてやまなかった先輩の名前を彼女が呼ぶ。
代わりでいいから側にいてほしかった。どこか楓に似ている君に。






その日俺と朱里は愛のない行為をした。
お互いが違う人を想いながら誰もいない図書室でひたすら偽りの愛を求めた。


「……っ豪、ご、う」
「………っ」

ただ心の穴を埋めたくて俺たちは日が暮れるまで抱き合っていた。








俺に2人目の彼女ができた。朱里にも彼氏ができた。
お互いが前の恋人を想いながら………………






















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