桜に導かれし魂
着替えを済ませ職員室に鍵を返しに行った朱里を靴箱で待っていると懐かしい顔に出くわした。
「玲夜…………」
険しい顔つきで近づいてきた玲夜はいきなり俺の胸ぐらをつかんで叫んだ。
「お前はいつまでこんなことをするつもりなんだ!!」
それがなんのことを意味するのかすぐにわかった。
「玲夜には関係ないだろう」
「新しい子をみつけたら楓はもう用無しだっていうのか?」
なにいってんだこいつ。楓が選んだのはお前だったじゃないか。
「楓にはお前がいるだろ」
カッとなってそのまま玲夜の腕を振り払うと俺は足早に学校を去った。







朱里には用事ができたとメールを送ってそのまま朱里を待つことなく家にたどり着く。
びっくりした。楓の名前がでてきただけでまだあんなにも心が揺れるなんて。


別れを告げられたあの日から俺は決めたんだ。楓の幸せを願うと。玲夜の側にいることを望んだ君の願いを受け入れようと。
俺がいちゃだめなんだ。楓が幸せになるために俺がいたらだめなんだ。
頭ではわかっているのに心が全く追いつかない。


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