桜に導かれし魂
「お兄ちゃん?!」




楓!


もう会いにいかないつもりだった。
もう二度と会わないと思っていた。
楓がそれを望んだから。あの日の俺と約束したんだ。もう会わないって。

だけどごめん、俺………約束守れそうにないや。




長い長いクリーム色の道。
久しぶりに鼻につく薬品の匂い。
もうすぐ見える。扉の向こうには君がいる。
だけど扉に手をかけたそのとき腕を引かれて振り返った。
「玲夜…」
「右京、こっちだ」
玲夜は俺の手を引き奥の病棟へ足早に向かった。

透明のガラス越しにいたのは楓。その扉の上には集中治療室とかかれている。
「なんでこんな………っ!玲夜!お前がついててなんでこんなことになるんだよ!!」
「…………」
なにも話さない玲夜に怒りを抑えることができずにそのままつかみかかる。
「あんなに元気だったじゃないか……!」
「……異常だったんだ……」
「え……………?」
「あれが異常だったんだよ!楓はお前に心配かけたくないからって俺たちの来る時間帯にあわせて薬を飲んでたんだ。それ以外のときもいつも無理して痛みも吐き気も我慢してたんだよ…………!」
「な…んでそんなこと……」
聞きたいことはたくさんあった。だけどそれを嫌な報告が遮った。
< 36 / 63 >

この作品をシェア

pagetop