桜に導かれし魂
桜の側に立つ者





「かえ………」

君がいなくなって初めて自分の犯した過ちに気づいた。でもなにもかもがもう遅い。
溢れ出す涙も周りの目もなにも気にならない。ただいつまでも瞼の奥にやきついた愛しい彼女の笑顔を思い出していた。
そして俺はまた走り出した。楓との約束をまもるために。君の願いを叶えるために。楓の温度を、匂いを、笑顔をはっきり覚えているいまのうちに、笑顔の君がいた学校に足を進めた。

楓がこの学校にいたのはたった2日だったけどここには1番新しい君との記憶が残ってる。


学校の自転車置き場から最初の角を曲がると開けた視界には1年前と同じピンク色がひろがっていた。膨らんだ蕾がいっせいに花を咲かせて、春の報せを告げる。
そして楓と見上げた大きな桜の木の下にはいないはずの人がいた。
茶色がかった髪、小さな体に、大きな瞳。



「な、んで……」
一面のピンクの中に楓がいた。

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