桜に導かれし魂
みつめる瞳
夢だとわかっていた。だけど、夢でもいいと思った。もう一度君の笑顔がみられるのなら。
「楓……」
愛しい名前を呼び彼女を抱きしめた。次の瞬間
「ちょっと!なんなの?!……あなた…だれ?」
ドンっと胸を押され彼女と俺の間に距離ができる。
頭がついていかない。俺の前にいる君は俺をしらない。楓じゃ、ない…?
「ごめん、楓に似てて……」
楓のことを愛しているのにまた違う女の子を抱きしめてしまった自分が情けなくて笑ってしまう。
「私は高市 湖夏よ。楓ってなんのこと?」
「………いや、なんでもない」
「ふ~ん。それよりここいいところね。桜がとってもきれい」
そういって微笑みながら空を見上げた彼女は楓そのものだった。
「私ね春からここに転校してくることが決まって、下見に来たの。でね、かわいいものみつけちゃった。ここみて」
そういって彼女は桜の木の幹を指差した。