桜に導かれし魂
目を凝らしてみるとここにも楓の残した記憶があった。
「かえ、で……っ!くっ……」
俺はまだまだ子どもで涙をとめる術すらも知らない。楓の健気なメッセージにこぼれる涙は止まることをしらない。
木の幹には“きょうちゃんわらってね”と彫られていた。
「きょうちゃんって誰のことだろう。って、え…どうしたの」
彼女が驚くのは無理もない。誰だって人が急に泣き出したら驚くものだ。
「あなたがきょうちゃんなの?じゃあこれをかいたのは……楓ちゃん?」
「ズッ…はは……勘のいいところまでそっくりだ………まいった、な」
会いたい、いますぐ君に。
「きょうちゃ
「その名前で呼ばないでくれ!忘れたくないんだよ!覚えてなきゃ、消えてしまう。思い出にすらできない……楓………」
楓にそっくりな彼女を突き放したかった。楓との思い出が君との思い出に書き換えられそうで俺は君を突き放したのに君は俺を抱きしめた。
「私は湖夏よ!!貴方にこんな表情させる楓ちゃんじゃないわ!」
わかってるよ、君が俺を慰めようとしてくれてるってことくらい。
だけど、だけど………
「……まえに、……がわかんだよ……」
「え?」
「お前に楓のなにがわかんだよ!!」