桜に導かれし魂

偽りから真実へ

彼女といたときは驚きすぎて忘れていたけど、楓はもういない。
泣いちゃいけない。泣いちゃいけない。
俺の笑顔を君が望んだんだから。俺が笑っていることを君が望んだんだから。


でも………………
今日だけは、許してくれないか………

「……ふっ……うぁ………っ、かえでぇ………!」
俺は朱里の前で泣き崩れた。
「右京……?」
「……ごめん、かえ…ごめ………っ……」
朱里は知らない。俺がどうして泣いてるのか。それ以前に楓が誰なのかすらも。
「右京………」
朱里は俺を抱きしめながら優しく名前を呼んだ。
優しさ甘えて、全部忘れてしまいたくて朱里に顔を近づけた時、楓の顔が浮かんだ。







“ 「右京おっそ~い!」 「みて!桜よ」 「大好き~」 「きょうちゃん」 ”



また、裏切るのか?楓を……俺の気持ちを………
また繰り返すのか?同じ過ちを…………

だって苦しくないから。朱里といたらこんなに悲しくて、辛くなかったから。
だけど………………
「………めん、ごめん朱里。俺、好きな子がいるんだ」
だけどそれは逃げてるだけだから。守りたかった君を泣かせていただけだったから。
俺の頭を撫でていた朱里の手が止まった。

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