桜に導かれし魂
空にいった君
2日後、楓を見送るために楓の両親、玲夜と一緒に火葬場へ向かった。
「右京君、今日はありがとうね。楓も喜ぶわ」
「……いえ………」
「……楓ね小さいときからいつも右京君の話をしてたわ。大好きだったのね、右京君が。楓の命は短いものだったけど、幸せだったはずよ。貴方に会えて、大好きだった人に愛されて。だけど右京君、貴方はまだ若い。これから先、生きていく毎日に楓のことを背負うには重すぎるわ。楓のことはいいから、幸せになってね」
返す言葉がみつからない。俺は幸せを願ってもらっていいようなやつじゃない。おばさん、俺はそんなにいいやつじゃないんだ。
最後の時、まるで眠っているような楓に口付ける。
「…俺もさよならは言わないよ。……またね、楓」
ちいさな楓が煙になって運ばれていく。
青い、蒼い空に君が溶け込む。
雲ひとつない青空なのに、空が泣いている気がした。楓が、泣いている気がした。
遺骨を一緒にいれないかと誘われたけれど、今の俺たちには遺骨に触れられるほどの勇気はなくて深々と頭を下げて立ち去った。
玲夜とふたり、静かな帰り道を歩いていく。
「右京、俺たちは楓になにかできたのかな?」
「玲夜は楓の側にいたじゃないか。なにもできなかったのは俺だよ」
「……そんなことはないさ」
そう言った玲夜は俺の顔を覗き込み困ったように微笑を浮かべた。
「楓はそんな顔がみたくて離れたわけじゃないだろ?……そんな顔をしてたら楓が悲しむ。………笑えよ、右京。苦しくてもお前は笑ってろ」
「………あぁ」
そうだ、俺は……………………
約束を守らなきゃ。
楓、俺もう泣かないから。
笑うから。年をとって君のところにいくその日まで笑ってるから。
いま 空が笑った気がした。
―――――――――――楓………