桜に導かれし魂
始まりのとき
異なること
数週間後、俺たちは2年生になった。
緑から青になったネクタイをつけながら机の上で笑ってる楓に笑いかける。
「おはよう、かえ」
あの日から俺は笑ってる。いつもいつも笑ってる。だけど無理をしてるわけじゃない。記憶の中の君がいつも笑ってるから、俺も笑顔になれる。
楓は………俺の中で生きてる。
「おにいちゃーん!玲夜くん来たよ~」
「今行く!いってきます、かえ」
「はやくはやく!遅れちゃう!!」
俺たちと同じモチーフの制服を着たこまちが玲夜の隣で俺を呼んでいる。
「右京、遅いぞ!」
玲夜もこまちの横で俺を呼ぶ。
楓とふたり通っていたこの道をいま3人ではしりはじめる。
自転車の二台にこまちがまたがったのを確認して玲夜がペダルを踏んだ。その後ろを静かについていく。
大きな坂を下り始めの角を曲がるとみえる。
「今年も満開だね!ここの桜並木」
「ほんとだな~」
玲夜とこまちの声を聞きながら咲き乱れる桜の中に楓を見た気がした。
「遅れるぞ、ふたりとも!」
はしゃぐふたりを横目に勢いよくペダルを踏みスピードをあげる。
「待てよ右京!」
「玲夜くんいそげ~!!」
後ろからは楽しそうな声がする。
ぎりぎりの時間に到着し校舎の角を曲がってみえるのは聳え立つ大木。
「うわ~!でっかーい!!」
「あいかわらず綺麗に咲くな」
「こまち、転ぶなよ」
俺が注意するとふたりは声をそろえてこう言った。
「「楓じゃないんだから」」