桜に導かれし魂
「……ょう、うーきょーうー!!」
うるせぇ~。
「ん………………」
顔をあげると楓がいた。
「ねぇもうみんな帰っちゃたよ!
楓たちもはやく帰ろー」
「はいはい」
珍しく俺の前をスタスタと
不機嫌そうに歩く楓。
なにかあったのだろうとは思いながらも
俺はあえてなにもきかない。
あいつがほんとに困ってるときは
楓のほうから俺に助けを求めることを
知っているから、
だから俺からは何もきかないようにしてる。
たぶんHRが長かったとか、
俺が全然起きなかったからとか、
まぁくだらないことですねてるだけだろう。
なんて考えていたら急に楓が振り返った。
「どうした?楓」
「右京」
「ん?」
「やっぱりなんでもなーい」
「そんなにすねるなよ。ほら、帰るぞ」
一度小さくうなずいて
そのままいつものように
俺の後ろをついてくる楓。
そんな楓を後ろに乗せて
俺はいつもの道をいつも通り帰っていく。
またすこし風が強くなる。
「ねえ、右京」
これまで何も話さなかった楓が口を開いた。
「なに?」
「………………」
俺が聞き返しても楓はこの日
それ以上言葉をくちにすることはなかった。
ごめんな、楓。
俺なんにもわかってやれなくて。
もう別れの時間は
迫っていたのに…………