桜に導かれし魂
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「こまちが心配することじゃないさ。ほら、急がないと入学式に間に合わないぞ」
「う、うん」
「行こうか、右京、こまち」
こまちを教室まで送りとどけた俺たちは2階へ続く階段をのぼる。
「なんの悪戯なんだろうな…」
「あぁ。だけど嬉しいと思うのは俺だけかな…?」
「……右京だけじゃないさ……俺も同じだよ。だけどあの子は楓じゃない。間違うのは楓にも、彼女にも失礼だよ」
「……わかってるさ」
玲夜とふたり各教室に張られている生徒名簿の中から名前を探すと、俺より先に玲夜がみつけた。
「お、あったぞ。5組だってさ」
「俺も?」
「俺も、右京も。……おまけにあの子も」
「……運命の悪戯、か………」
「そのようだね」
扉を開けると教室にいたみんなが俺たちのほうを見ながらざわつきだした。
「あの背の高いほうが長崎君でツンツンが見のほうが小湊君よ」
「えー、かっこいー!!」
「でも小湊君って佐久間さんと付き合ってるんでしょう?」
「あ、そっか~」
「小湊君もかっこいいけど~私は長崎君派!」
「なんだよ女子、うっせーぞ」
クスクス笑いながら玲夜が言った。
「モテモテですね、右京君」
「はぁ?お前だろ」
「いやいや、めっそうもございませんよ」
妙な会話を済ませた俺たちは自分の席へと向かった。俺は2列目の後ろから3番目。玲夜は4列目の前から2番目。しばらくして先生が入ってきた。
「みんな揃ってるな~。おーい、はいってこい」
先生の声を合図に可憐な彼女が姿を現した。