桜に導かれし魂
入学式も終わり軽くHRを済ました後、すぐに下校となった。
「右京、玲夜また明日ね!」
湖夏が出て行き俺と玲夜だけになった静かな教室で玲夜が口を開いた。
「なぁ、右京」
「ん?」
「やっぱり楓そっくりのあの子がいるのいや?」
「…いやっていうか……。ついてかないんだよ、頭が。どうしても楓にみえるんだよ」
「俺も今朝あの子を見たとき楓だと思った。楓じゃないってわかったときは運命って残酷だとも思った。でも………」
「でも…?」
「思ったんだ。この子を守ってあげないといけないんじゃないかって。楓が自分にそっくりな湖夏を俺たちに守ってくれっていってるんじゃないかなって」
「玲夜…………」
「楓を守れなかった俺たちに神様はもう一度チャンスをくれたんじゃないかな…」
「………………」
玲夜の言いたいことはわかる。でも、だけど…………………

「……守れるなら、楓を守りたかった………」
「…右京……」

チャンス?
違うだろ、これは楓を守れなかった俺への罰だ。











「……守るよ、俺が」
「右京………」












窓から下を見下ろすと数人の女の子たちに囲まれて湖夏が笑っていた。

荒れ狂う桜の中で笑っている君は楓だった。風になびく茶色がかった髪も、吸い込まれてしまいそうなくらい透き通った瞳も、桜をみつめる横顔も。
でも君は楓じゃない。
今度こそっていう表現はおかしいのかもしれないけど守りたいと思った。君が楓に似てるから、似すぎているから。

「……右京、俺たちも帰ろうか。こまちが待ってる」
「ん、あぁ」
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