桜に導かれし魂
俺の腰に手を回しクスクスと声を漏らす湖夏。そんなこんなで学校に着き大きな桜の木を通り過ぎようとしたとき湖夏が俺を呼び止めた。
「待って右京」
「なに?」
「ちょっとしゃがんで」
意図はわからないまま湖夏の言うとおり少しかがんでみせると小さな手が俺の頭に伸びてきた。
「?」
「ほら、桜」
湖夏は桜の花びらを持っていた。
「いっきに咲いたと思ったらいっきに散っちゃうのね。とても綺麗に咲いてるのにどうしてこの桜はこんなに寂しそうに見えるのかな……」

入学式の日、俺も今の湖夏と同じことを考えていた。
散りゆく花びらはどうしてこんなにも悲しいんだろうと。

俺が桜の木を見上げたとき不意に湖夏が呟いた。
「……右京みたい………」
「え…………?」
なんのことだかわからない俺に湖夏が続ける。
「桜の元に集をいた魂はかわいらしい花を咲かせながらもかわいそうであるそれをえると微笑む」
「………?」
「桜の元に集いし魂は美しい花を咲かせても悲しそうに微笑むって意味。私と右京が会ったのはどこか覚えてる?」
「こ、こだろ?」
「私と右京が会った時右京はなにしてた?」
「…泣いてた……」
「いまは…?」
「……え……?」
「綺麗な顔で笑ってはいるけど私にはその笑顔が悲しそうに見えるわ」
なにを言い出すかと思えば
「そんなわけないだろ」
なにもかも見透かされているように湖夏の言った事が当たっていたから逃げるようにその場を立ち去ろうとしたけど湖夏の声に足を止める。
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