桜に導かれし魂


グランドから見える図書室には電気がついていた。
ビンゴだ!!
アイコンタクトの後俺たちは再び走り出した。


ガラガラッ!!
「朱里!!!」
声を荒げたのは他でもなく豪さんだった。
豪さんに続き図書室に足を踏み入れた俺は朱里の姿を見るなり唖然とした。
「あ、かり……はぁ~」
「こいつ……寝てやがる…」
「でもまぁよかったっすね、豪さん」
少し遅れて湖夏が朱里の安否を確認した。
「朱里ちゃんみつかった?」
「あぁ、寝てるけどな。おい、朱里~起きろよ」
「ん~……」
眠たそうに目をこすってぼーっとしていた朱里だが豪さんを見るなりその緩みきっていた表情が強張った。
「ご、う………右京も…なんで……」
「………………………………」
「お前がいつまで経っても帰ってこないからおばさんが心配して豪さんに電話したんだよ」
「そうだったの…ごめんなさい。ちょっと眠たくなってうとうとしてただけなの。心配してくれてありがとう右京、湖夏ちゃんそれに、豪も。来てくれて嬉しかった」
豪さんは何も言わずに俺たちに背を向け
「右京2人を送ってやれ」
とだけ言い足早に図書室を出て行ってしまった。

「さぁ朱里ちゃんも見つかったことだし?帰ろっか」
「そうだな。立てる?」
俺が手を差し伸べると朱里は綺麗な手を重ね合わせ微笑んだ。
「えぇ。ありがとう」


朱里と湖夏と3人、静かな道を並んで歩く。朱里の家に着いたとき朱里は俺たちに頭を下げてもう一度お礼を言った。
「右京、湖夏ちゃん、ありがとう」
その後軽く微笑むと俺たちに背を向けた朱里はドアノブに手をかけた。そして背を向けたまま呟いた。
「豪は………どうして来たの………?」
朱里が1番言いたかったのはこのことなのかもしれない。なぜ豪さんがあんなに必死に俺のところに来たのかはわからないけど、ひとつだけ言えるのは……
「心配してたよ、すごく。俺たちよりもずっと………」
朱里の足元に落ちる滴が見えたのは気のせいだろうか。それからもう一度ありがとうと呟くと家に入っていった。
< 62 / 63 >

この作品をシェア

pagetop