桜に導かれし魂
力なく床に落ちた俺の右手が
血に滲んだ楓の手に握られた。

「ケホ、……右京。
か、えでは……ゴホッゴホ!
……だいじょ、、ぶ……だから、ね」




涙がこぼれた。
いま1番つらいのは苦しいのは楓なのに
俺が泣いてちゃいけないのに
俺が泣いてるから楓が心配している。

微笑む楓の顔はやっぱり真っ青で
口のまわりや手は
たくさん血がにじんでいるけど
楓が大丈夫というのなら

大丈夫なんだと信じたかった。



「のいてのいて。
佐伯さんね…………」

保健の先生と救急隊の人たちがきて
楓をタンカにのせて救急車に乗り込んだ。
もちろん俺も一緒に。

「楓、楓」
ヒューヒューと音をたてて
息の上がった楓からはなんの返答もない。

返事の返ってこない応答をまつ俺に
先生が一生懸命大丈夫だからと
促すけれど俺には全く聞こえなかった。


いやだ………
いやだ、楓!

「小湊君、大丈夫だから。落ち着いて」


――――――楓………




先生のその声を最後に俺は意識を失った。





「……うちゃーん、
きょうちゃーん!はーやーくー」

「はぁ、はぁ……かえ、はやいよ」


小さい時の楓と……………………俺?


「かえでね、きょうちゃんだーいすき」
「ぼくもかえだいすきだよ」
「じゃあおっきくなったらかえでを……
………んにしてね」
「うん!」

にっこりと俺に笑いかける楓は
今と同じ愛しい愛しい女の子だった。






「や……そ…………だよ………」




















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