桜に導かれし魂
「かえ!!!」
俺が目を覚ましたのは病院のベットのうえで
起きるなり俺は看護婦さんに
楓の病室を聞きお礼もいわずに走り出した。
クリーム色の廊下が果てしなく長く感じて
どんなに足を回しても
全然進まないような気がした。
楓、楓、楓!
無事でいてくれ……!
ガラガラッ
「楓!!!」
「びっくりした~」
勢いよく病室の扉をあけると
ベットに座って本を読んでいる楓がいた。
「か、えで…?」
「っていうか……
なんで右京まで倒れてるわけ?
起きた時こっちがびっくりしちゃったわよ」
あぁ、楓だ。
途端に溢れ出した涙を
止める術なんて俺は知らない。
もう彼女の口元に血はみえない。
もう大丈夫なんだ、大丈夫なんだと
わかっているのにはやく楓をつかまえないと
今度こそどこかにいってしまう気がして
俺は夢中で楓を抱きしめた。
「ちょ、右京?!!」
「楓、…………よか、った」
「まったく…………………………」
楓はひとつちいさなため息をつくと
右手を俺の背中に回して、
のこった左手で優しく俺の頭を撫でながら
ゆっくりと話始めた。
「ちっさいときさー、
楓は男勝りで右京泣き虫だったよね。
まぁ泣き虫なのは
今も変わってないみたいだけど。
ほんと、なっさけない男」
「…………うるせぇ…」
「右京っていまでもまだ
楓がいないとだめなのにね………」
俺の頭を撫でていた左手を止めて
今度は楓が俺を強く抱きしめた。
「………………めん。
………ごめんね、右京」
「楓?」
「…ごめんね、右京。楓…………」
「楓?かえ………」
俺の頭に滴が落ちた。
「楓………
右京残して死んじゃうよ………!」
あぁ………
全部、悪い夢だったらいいのに。
神様……………
楓がいったいなにをしたっていうんだ。