君が知らなければいけない事実
飲んだ薬は
お昼ごろ、気持ちよく
目が覚めた。
汗でべとついた服に包まれて
不思議に思う。
唇の、感触に。
あの、匂いに。
あの夢から救ってくれた匂いは
誰のものだろう。
声は、ずっと好きを繰り返す。
あの声は誰の声で、あの匂いは
誰の匂いで、あの感触は誰の
感触なのだろうか。
僕は、無意識にひとりごちた。ひどく
「……冷たかった」
あの唇の温度は、僕のとは
比べものにならないほどに
冷たかった。
しかし、そこで気づく。
僕は、熱を出していたのだ。
それだったら冷たく感じるはずだ、と。