君が知らなければいけない事実



荒々しく玄関のドアを
開こうとした僕は
とってに手をかけ思い止(とど)まる。



自分の、このドロリとした
暑い熱と金属製であるとっての
冷たい温度差に

苦しくなってしまったようで。




急に腹が立って目が霞む。



答えは、すぐ目の前で消えた。





「好き」は消えた。




僕は、なんのためらいもなく
冷えたとってに手をかけた。













「風邪」


嫌みたらしく問う声が聞こえた。


「そう、風邪」


分かっているから、簡潔に答える。



< 16 / 56 >

この作品をシェア

pagetop