君が知らなければいけない事実


「お、おばさんから話を
聞いていませんか?」


「……僕は、基本的に母と
言葉を交わすことを極力
避けている」


もしかしたら、昨日
言いかけていたことはこのことか。


「そう、ですか……
私は家の事情で、何ヵ月か
ここに住むことになりました」


「……事情って?」


「それは、言いたくありません」


よほど言いたくないのだろう。
僕にもその気持ちは
分からなくもないので
何も聴かないことにした。


「未成年?」


「……」


「未成年じゃなきゃ
ここには住まないか……」


「……はい」


そう言うと、彼女は
悔しそうに口を歪めた。

それは、酷く
怯えたようでもあり
どこか凛として見えた。



それなのになんて





僕は




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