君が知らなければいけない事実

すぐそこに



「おはよう」


「あ、おはようございます」


昨日の散歩は熱を出し
寝たきりだったせいか、
どことなく足取りが重かった。


しかし動かないと余計に
身体が重くなると思い、
気にせずに歩いた。



今日も伊宇は僕の視界に入る。


僕の目にうつる伊宇の、
少し憂いのあるその目は
僕の心を掻き乱す。



「熱、はかってくださいね」


「はからなくても、
もう大丈夫なのに」


「何言ってるんですか、
念のためです」


ふっ、と僕は笑う。



あまりにも真剣に口を尖らせて、
君がそういうものだから。
大人しく熱をはかることにした。

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