先生、大好き
付けられた傷-蒼空side-
僕と大馳は悲鳴の聞こえた使われていない教室に来ている。
どうしてか僕にも分からないがとても嫌な予感がした。
「蒼空‥」
大馳が僕を呼ぶ。
少し不安そうな顔をしているが、しっかりと目の前のドアを見つめている。
大馳の不安が取れればと‥なるべくいつも通りに優しく言う。
「開けますよ。大馳」
大馳は僕を見て、頷いた。
ガラッ!!!
僕は勢いよくドアを開けた。
そして目を疑った。
そこにいたのは‥傷だらけで少し血が滲んでいる湊さんと…悲しそうな顔をした沁司君が立っていた。
「なぜ‥君が…」
「どういうことだよ!!沁司さん!!!」
僕が『どうして』と聞こうとしたとき大馳の声に妨げられた。
沁司君は悲しそうに‥今にも泣きそうな声で「ごめん‥」そう吐いた。
「沁司さん!!!!」
「‥っ」
「大馳!」
僕は大馳を止めた。
大馳にとって沁司君は憧れの人だ。
いつも明るく素直で思いやりのあるクラスのムードメーカー的存在。
『いつか沁司さんのような人間になりたい』これが大馳の口癖だった。