トライアングル
そんな強いお父さんを、あの二人はまた、大切に思ってたんだ。
もちろん、今だって。
あの二人にとって、お父さんは…ただ一人なんだから。
「今日はごめんね。せっかく来てくれたのに」
施設の帰り道。
真っ暗の中、優也は眉を曲げて言った。
「ううん。私こそごめんね。何の役にも立てなくて」
「そんな事ないよ!真由ちゃんがいてくれるだけでいいんだよ」
「うん……」
秋の夜は、少し風が冷たい。日もすっかり落ちて、空にはいくつもの星達が輝いてる。
私と優也の歩く音と、鈴虫達の鳴き声だけが響いてて。
いつもよりゆっくりと歩いて帰る。
凄く心地いい夜だった。
だけどなぜか、優也がとても遠く感じた。
まだ、私は優也の全てを知らない……気がするんだ。
「優也?」
まだ知らない、優也の一面。
それが知りたいと思った。