彼氏のこと。
卒業式はあっけなく終わって
みんなが帰った教室で
あたしは泣いた
卒業して笑ってる賢くんを見て
今までこらえてきたものが
音を立てて崩れていった
遠い遠いひとに見えた
顔を伏せて泣いていると
けーたいが鳴った
着信[賢くん]
一瞬、不安と期待が浮かんで
すぐに期待が上回った
「..はい」
「澪?今どこ?」
「えっ、教室だよ」
「今から行くから待ってて」
「え?でもあたし―――」
「プツッ」
なにがなんだかわからなくて
とにかく涙でぐちゃぐちゃの
顔を拭いて呼吸を整えた
あたしはまた
期待が大きくなった
受験が終わってやっと
賢くんはあたしを見てくれる
受験大変だったんだよね
余裕が無かったんだよね
わかってあげられなかったね
クリスマスのこと謝ろう
指輪くらいであんなこと..
あたしみっともないな
そんなことを考えていたら
廊下を歩く音が聞こえて
ドアが開いた