孤独との対話が、わたしの楽しみです。【短篇集】
「すみません、頼みたいことがあるのですが」

突然声を掛けられた少年は、訝しそうに相手に視線を投げかける。

「何ですか?」

声の主を見て、少年はますます眉をしかめる。

相手の男の第一印象は、何かを企んでいそう、だ。

もともと細いであろうにも関わらず、笑顔を貼り付けているために糸みたいになっている目。

端がピクピクと震えている唇。

手入れされているとは言い難い髪。

職業不詳だが、スーツに身を包んでいる。

年齢は三十代ぐらいだろうか。


顔は笑っているものの、別の何かを隠す手段として笑っているようなのだ。

見覚えのないこの男が、何を頼みたいというのだろう。

少年は好奇心と警戒心が共存するのを自覚しながら、男の口が開かれる瞬間を待った。

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