孤独との対話が、わたしの楽しみです。【短篇集】
「この本を、メモにある住所のポストに入れて欲しいんです。生憎、私は少し用事があるもので……」

示された本は、何の変哲もないものだ。

大きさは単行本と同じぐらいだ。

黒い表紙に『用語集』という白い文字が光っている。

「勿論、謝礼なしに、とは言いませんよ」

男は上着のポケットから財布を取り出した。

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