孤独との対話が、わたしの楽しみです。【短篇集】
「これと共に、だったらどうでしょう?」

福沢諭吉が、少年に微笑みかけていた。

「いいんですか?」

「ええ。なかなか頼みにくいことなんでね、引き受けてくださるのでしたら光栄ですよ」

メモにある住所を確認する。

N町四丁目。

友人の実家が確か、N町二丁目にあったはずだ。

全く知らない街ではない分、心強い。

何よりも、それだけで金が手に入るとは有難い話だ。


最初の警戒心はどこやら、少年は男から本とメモ、紙幣を受け取った。

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