孤独との対話が、わたしの楽しみです。【短篇集】
一人になった少年は早速、友人に電話を掛けた。

「N町四丁目ってお前の実家から近い?」

すると、友人の声が曇る様子が、電話越しに伝わってきた。

「N町は三丁目までしかないけど」

頭の中が真っ白になる。

さほど冷たくない秋風が、少年の首筋を幽霊が触れるように、撫でていった。

「そっか。ちょっと間違えたみたいだ。ごめんな」


電話を切った少年は、右手にある本を開いた。

こんな文字が視界に入ってくる。

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