孤独との対話が、わたしの楽しみです。【短篇集】
雪合戦にすっかり夢中になった僕らが我に返った時、校庭にいる生徒は少なくなっていた。

風も、強い。

僕の想い人の姿もなく、がっかりしていたが、或るものが視界に入ってきて、無意識のうちに笑みがこぼれた。

雪だるまだ。

彼女が友達と遊んでいた辺りに堂々と居座る、雪だるま。

枯れ葉の目。

何かの実でできた、赤い鼻。

口は枯れ葉がまた、その役割を果たしていたと思われるが、下に落ちてしまっている。

両腕は、枯れ枝だ。


何だかとぼけたような表情の雪だるまは、付き合っていた頃に彼女が浮かべていた、暖かい笑みを彷彿させる。

僕は心がほかほかしていた。

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