孤独との対話が、わたしの楽しみです。【短篇集】
だが、同級生と別れて一人で帰路についた僕は、信じたくないものを目にしてしまった。


延々と続きそうな、二組の足跡。

視線を上げると、それはまさに想い人と、一人の男子生徒のものだと判明した。

男子生徒の鞄にあるラベルから、彼が一学年上だと知る。


そして、彼女は優しげな笑みを浮かべながら、彼の乱れたマフラーを直していた。


足の裏が接着剤で固められたのかと思ってしまうほど、僕は動けなかった。一歩も。

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