孤独との対話が、わたしの楽しみです。【短篇集】
その日、わたしは昼になっても自室でぼんやりとしていた。

「あんたに声を返すよ」

しわがれ声が聞こえ、私はハッとした。

「帰ってきたのですか? あ、声が戻ってる。それで、あなたは何をしたかったのですか?」

「それは秘密だよ。でも、もう満足だよ。あんたのお陰だ。ありがとう」

『魔女』は相好を崩したので、もともと皺の多く刻まれた顔が、一層皺だらけになった。

「どういたしまして。良かったですね」

「そうだね。お礼として、『何か』をあげよう」

「『何か』って何ですか?」

わたしは真剣に答えを求めたにも関わらず、『魔女』はニヤニヤと笑って言葉を発した。

「ひ・み・つ、だよ。一つ、ヒントを与えよう。声と同じように、目に見えないものだよ」

「目に見えない、もの?」

「うん。それじゃあ、元気で」

再び一瞬で、『魔女』は消えてしまった。

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