孤独との対話が、わたしの楽しみです。【短篇集】
お気に入りの人形を持っていた彼女だったが、新しいものが欲しくなった。

しかしながら、今のもので十分だ、と両親は取り合ってくれない。


意地になった彼女は或る晩、その人形を道端に置き去りにしたのだ。


「お人形、なくしちゃった。だから、新しいの買って」

そう告げる彼女に、母親は言った。

「今頃、そのお人形は悲しんでいるわ。大切なお友だちと離れてしまったのだから」

ハッと胸を突かれたようだった。

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