六天楼の宝珠〜亘娥編〜
昼間阿坤に遮られた謎の建物は、誰に聞いたわけではないが北の欽天楼(きんてんろう)と奏天楼の間程の位置だったと思う。
四つの主楼閣の話は最初に説明されたのに、何故その建物は知らされなかったのだろう。
何気なく言ってみたのだが、槐苑は顔色を変えて「知りませぬ!」と慌て出した。
「いいですか、奥方様」
とても齢八十を超えた老人とは思えぬ強い力で、彼女は主の両腕を掴んだ。
「あの建物には興味を持ってはいかん──鉦柏楼には亡霊が出るのじゃ。……近づけば、必ず恐ろしい事になるでしょう」
やはり槐苑の知識は朗報をもたらさない──
翠玉は鬼気迫るその顔を凝視しながら、嫌な予感が当たった事に眉をひそめた。
そして残念ながら、事態はこれだけでは終わらなかったのである。
四つの主楼閣の話は最初に説明されたのに、何故その建物は知らされなかったのだろう。
何気なく言ってみたのだが、槐苑は顔色を変えて「知りませぬ!」と慌て出した。
「いいですか、奥方様」
とても齢八十を超えた老人とは思えぬ強い力で、彼女は主の両腕を掴んだ。
「あの建物には興味を持ってはいかん──鉦柏楼には亡霊が出るのじゃ。……近づけば、必ず恐ろしい事になるでしょう」
やはり槐苑の知識は朗報をもたらさない──
翠玉は鬼気迫るその顔を凝視しながら、嫌な予感が当たった事に眉をひそめた。
そして残念ながら、事態はこれだけでは終わらなかったのである。