嫌いなあいつは婚約者
あたしの財布が空になった頃、松田は制覇も終わり、帰ることになった。
「あーっ、食った食った!」
「そりゃよかった……」
混雑する駅の中、財布の中身を確かめていると、どんっと体をおされた。
「うわっ!!」
「っ!!!」
チリンと音をたてて散らばるあたしの数少ない小銭。
あっ、と思ったとき、あたしのお腹まわりにあたしじゃない人の腕がまわっていた。
「っぶねー!!…大丈夫か?」
「う、うん……」
「ありがとうございます」と周りの人に落ちてた小銭を貰って言う松田を見ながらぼーっとするあたし。
え、何このときめき。
ドクンドクンと心臓が高鳴る。
それからは、集めた小銭を差し出されてもぼーっとしているあたしの額をつく松田も
満員電車の中さりげなく壁側にあたしを立たせる松田も
別れた後に視界に入った松田の後ろ姿も
かっこよく見える……。
………どうやらあたしは恋をしてしまったようだ。
しかも松田に。
……………ありえねぇぇぇえっ!!
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