嫌いなあいつは婚約者
「おいひい…」
もぐもぐと口に入れる。
お腹が空いていたのもあるが、何よりも味がめちゃくちゃ良い。
松田にはこんな隠れた特技が…と真剣にお粥を見つめていると「おい」と声をかけられた。
「なんで風邪だって言わなかった?」
そう聞いてくる松田の顔は真面目で、私はレンゲを置くと松田に向かった。
「だって、迷惑かかるし…」
「言われない方が迷惑」
ずばっと吐き捨てられ、俯く。
だって、松田家にはこれ以上迷惑かけられないし…
松田に…嫌われたくないし……
やばっ、泣きそう。
風邪で体が弱ってるからか、心が不安定で目頭が熱くなる。
そんな不安定な私を知ってか知らずか、松田は私の顔を両手で痛いぐらい挟むと、ぐいっと顔を上げさせた。
「んなこと1回しか言わねーから良く聞いとけよ。
…おまえは俺の婚約者だろ。
今おまえが頼れんの、俺らぐらいしかいねーんだから、風邪のときぐらいもっと頼れ。」
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