嫌いなあいつは婚約者




風邪のときのあいつはいつもと違ってしおらしく、正直、めちゃくちゃ可愛かった。


相当辛そうな風邪だったのに、俺らに……当たり前なんだろうけど、俺に教えてくれなかったのが悔しくて問うと、迷惑がかかる、と伏せ目で言う。






そこで、もっと素直に、好きだから頼って欲しい、と言えれば格好良かったんだろうけど、
生憎俺はそんなに格好良い奴じゃない。



遠回しに、"好き"の意味を込めて言うと、ポロポロと涙を零したあいつ。


それを見て、なぜだか心がほんわかと暖かくなり、俺はぽんぽんと頭を軽く叩いて、部屋を出た。





あのまま部屋にいたら、熱で上気した顔でポロポロと泣くあいつに、我慢できなくなりそうだったから……








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