嫌いなあいつは婚約者


病院で、椅子に座って待つ。
そこに駆け付けてきた兄さんは、俺を見るなり勢いよく殴ってきた。





予期してなかったために、体がその力に沿って倒れる。


倒れたまま兄さんを見上げると、見たこともないぐらいに取り乱した兄さんが、唇を強く噛んでいた。







それから、一言も話さないまま時間が過ぎる。


手術室のランプが消えて医者が出てくるまで、兄さんは顔を上げなかった。






医者が言うには、もう大丈夫らしい。


命に別状もなく、少し入院して様子を見たら自体で安静に、ということらしかった。










.
< 319 / 335 >

この作品をシェア

pagetop