嫌いなあいつは婚約者
いったい何が…?
現状を把握するよりも先に、手をひかれてその場を去る。
人通りの多いところまで来たとき、あたしを助けてくれた、いかにもチャラそうなお兄さんはふぅ、と息を吐いた。
「大丈夫だった?」
「はい。大丈夫です。」
さっきも、こんな風に助けられて、騙された。
この人も下心を持ってあたしを助けたんじゃないか…。
その思いが顔に現れていたらしく、お兄さんは苦笑いをした。
「それなら良かった。…それじゃあ気をつけて帰ってね。」
呆気なく去っていくその人。
見た目と違って、性格はとても清純で優しそうだ。
さっきの態度はさすがに失礼だったか、と反省すると、あたしは遠退いて行くその人を追い掛けた。
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