嫌いなあいつは婚約者


「あっ!」

つい声をあげてしまう。



店にいた人が一斉にこちらを向いた。
もちろん、あのお兄さんも。


そして、目が合ったのだ。




「あ、この前の!」


こっちで一緒にどう?と誘われ、お言葉に甘えて同席させてもらう。

顔見知りの店員さんにいつものを頼むと、私は席に着いた。





「また会えるとは思いませんでした!」


「あ、うん。まぁね…。」





この喫茶店が気に入ったから、と言ってくれる。

お気に入りの喫茶店が褒められて、私はとても気分が良かった。






「そういえば、名前教えて貰っても良いですか?」



そう聞くと、お兄さんも乗り気で答えてくれる。



早川空雅。早川空雅。



何度も覚えるように心の中で復唱した。











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