6月の蛍―宗久シリーズ1―
予感
6月下旬、季節は梅雨。
僕は、車で40分程の距離にある職場から、自宅へと車を走らせていた。
朝から降り続いている雨は、まるで霧吹きで吹き掛ける様に、車のフロントガラスに水滴を残す。
赤信号。
スローで動かしたワイパーが、視界を確保する様子を眺めながら、僕はぼんやりと暗い夜空をガラス越しに見上げた。
星と月を覆い隠す雲は、はるか上空で吹く風に流されて、ゆっくりと船を漕ぐ様に流れていた。
時折、その隙間からわずかに見え隠れする満月。
……おかしな空だな。
何となく、そう思った。
青信号を確認し、アクセルを踏む。
商店街を抜け、徐々に景色が畑へと変わる。
田んぼを視界の両側に眺めながら走り、目の前の林に入る。
ここからが、家の庭になる。
自宅は、林の中だ。
僕の住む土地は田舎だ。
それでも昔は豪族だったという実家は、それなりに格式を重んじる。
僕にはよくわからないが、未だに本家だの分家だの、昔からのしきたりがあるらしい。
僕は、車で40分程の距離にある職場から、自宅へと車を走らせていた。
朝から降り続いている雨は、まるで霧吹きで吹き掛ける様に、車のフロントガラスに水滴を残す。
赤信号。
スローで動かしたワイパーが、視界を確保する様子を眺めながら、僕はぼんやりと暗い夜空をガラス越しに見上げた。
星と月を覆い隠す雲は、はるか上空で吹く風に流されて、ゆっくりと船を漕ぐ様に流れていた。
時折、その隙間からわずかに見え隠れする満月。
……おかしな空だな。
何となく、そう思った。
青信号を確認し、アクセルを踏む。
商店街を抜け、徐々に景色が畑へと変わる。
田んぼを視界の両側に眺めながら走り、目の前の林に入る。
ここからが、家の庭になる。
自宅は、林の中だ。
僕の住む土地は田舎だ。
それでも昔は豪族だったという実家は、それなりに格式を重んじる。
僕にはよくわからないが、未だに本家だの分家だの、昔からのしきたりがあるらしい。
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