6月の蛍―宗久シリーズ1―
古い家独特の、重く張り詰めた空気。
柱時計の針が刻まれる音だけが、今、ここに時間がある事を確認させる。
握り合う手…咲子さんの白くて細い手は、雪を思い出させる。
こんな冷たい想いを抱えながら、この人は…何年過ごしてきたのだろう。
温め合う相手を忘れてしまう程に………。
「僕の手は、温かいですか?」
「………ええ、とても…」
咲子さんは、静かに黒い瞳を閉じる。
「この温もりを、あの人にも感じたでしょう?それだけを思い出して下さい」
「暖かさ………」
うなづき、僕は咲子さんの冷たい手を更に強く握った。
冷たさと共に伝わってくるのは、後悔の念。
自責の念。
これが全て、彼女を縛り付けていたのだ。
父もそれを知っていた。
だが、それがあまりにも強すぎて、おそらくどうしようもなかったに違いない。
だから、今日なのだろう。
まだ、間に合う。
咲子さんも……あの人も…。
そうでしょう?父さん。
柱時計の針が刻まれる音だけが、今、ここに時間がある事を確認させる。
握り合う手…咲子さんの白くて細い手は、雪を思い出させる。
こんな冷たい想いを抱えながら、この人は…何年過ごしてきたのだろう。
温め合う相手を忘れてしまう程に………。
「僕の手は、温かいですか?」
「………ええ、とても…」
咲子さんは、静かに黒い瞳を閉じる。
「この温もりを、あの人にも感じたでしょう?それだけを思い出して下さい」
「暖かさ………」
うなづき、僕は咲子さんの冷たい手を更に強く握った。
冷たさと共に伝わってくるのは、後悔の念。
自責の念。
これが全て、彼女を縛り付けていたのだ。
父もそれを知っていた。
だが、それがあまりにも強すぎて、おそらくどうしようもなかったに違いない。
だから、今日なのだろう。
まだ、間に合う。
咲子さんも……あの人も…。
そうでしょう?父さん。