6月の蛍―宗久シリーズ1―
「………私」



閉じていた咲子さんの瞼が、ゆっくりと上がる。




「思い出せましたか?」


「はい………」





僕を見つめ返すその瞳からまた一筋、雫が白い頬を伝い流れ、顎先から落ちた。







「私………あの人の…妻でした……」





その表情からは、白昼夢が消えていた。





封印が解かれたのだ。






同時に彼女の想いが、出来事が、穏やかな清水の流れの様に、僕の手の平へと染み込んできた……。








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