6月の蛍―宗久シリーズ1―
私は全て知っている。



それを知れば、あなたはきっと悲しむでしょう。



この温かい胸を、私の為に痛める事でしょう。






私もまた、あなたを悲しませたくはありません。





あなた…私はあなたの為に、一体何ができるのでしょうか。









夫の胸の中、瞳を閉じる私の脳裏に、姑の言葉が響く。





―子供ができなんだら、家を去ってもらうしか……―









夫との子供。


望まない訳があろうか。




愛する夫との子供を授かれば、どれだけ幸せが増すだろう。









治療を……受けてみようか。



何か原因がわかるかもしれない。






不妊……今の世で、それは女にとっては苦痛で、世間様の目もある。





けれど、そんな目よりも、私はただ、夫のそばにいたい。




この人の子供を産みたい。







その時の私には、それしか無かった。







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