6月の蛍―宗久シリーズ1―
好奇心が刺激されたのだろうか。


金森は身を乗り出して質問してきた。






「もしや、姑に何か言われましたか?」

「……え?」

「あいつの母親は、昔からそういう事にこだわる傾向がありましたしねぇ」



金森は、軽く笑う。






私は、返答しなかった。



金森のその口調に、真摯さを感じられないからだ。




彼の言葉には、あからさまな興味の色が濃く出ている。









―子供ができなんだら……―










……伝えた所で、何も変わらない。




この事は、誰にも言ってはいけない。





夫が、私に必死で隠している事なのだから。








「では、検査結果が出たら報せますよ。電話でいいですか?」



電話………。



金森の提案に、私は慌てた。




「いいえ……自宅への連絡は……」








ここに来た事は、誰にも知られてはいけない。



夫と姑には、決して知られてはいけない。




姑の小言が増える。



そして夫はきっと……私を庇い、自分一人で全てを背負い、盾となってしまうだろう。




見なくともわかる……。


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